GPT-4に公的文書を任せられる日は来る? SEO対策記事の闇深い事情


こんにちは、タスクスクエアの齊藤です。

今回は、「インターネット上に公開されている情報って、何処まで信用して良いかわからなくて怖いよね」という話です。

先日、「ChatGPTが書いた文章を社用ブログに転載して良いの?」という内容のブログ記事を書きました。
AIを使う際のリスク等は「ChatGPTに自社ブログの原稿作成を依頼してみました。」に記載しましたので、そちらをお読みいただければと思います。

その後、社内にて「そういえば、MicrosoftのBingにGPT-4が導入されて、ChatGPTより格段に性能が良くなったらしいね」という話になりまして、それではGPT-4ならブログ記事の執筆を任せられるかしら、と早速試してみました。

  • 実際にどんな文章を書いてくれたの?
  • GPT-4の文章なら信用できる?
  • インターネット上の記事を鵜吞みにしてはいけない理由

実際にGPT-4を使用した感想と、Bingとのチャットを通して見えたインターネット記事の残念なところについて書きますね。

GPT-4の書いた記事もダメだった

先に結論からお伝えしますと、ChatGPT同様にGPT-4を備えた新しいBingも事実と異なる記事を書いてしまい、また如何しても話の流れの不自然なところが目立ちましたので、ホームページの原稿や社用ブログの執筆などの利用方法においては、「まだ実用的な段階ではないね」という話に落ち着きました。

最近よく問題になっている実はAIが考えて云々というのも、恐らく営業的な物事の伝え方を一切含まず、知識を羅列する程度なので成り立つのでしょうね。

ただ、やはり基礎的な文章能力は備わっていますので、正しい知識が蓄積されていけば、将来的には有力なサポーターとして活躍する日が来るのかもしれません。

未来が楽しみですね。

用語を解説する程度なら、GPT-4が活躍しそう

例えば、以下はMicrosoftのBingに「SSLとは?」という題材で書いてもらった原稿です。途中で「図や例を挿入する」、「段落ごとに小見出しを付ける」の2回、修正指示を加えました。

こんな感じで条件を設定しています(クリックして開く)。

```
```
こんにちは。この記事では、SSLという仕組みについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。

SSLとは

SSLとは、インターネット上でデータを暗号化して送受信するためのプロトコルです。プロトコルとは、通信の手順やルールのことです。SSLを使うと、個人情報やクレジットカード情報などの重要なデータを安全にやり取りすることができます。

続きを読む

SSLの仕組み

SSLの仕組みは、大きく分けて2つの機能があります。一つ目は、通信相手の認証です。二つ目は、通信の暗号化です。それぞれについて説明します。

通信相手の認証

通信相手の認証とは、インターネット上でやり取りする相手が本当に正しい相手かどうかを確かめることです。例えば、あなたがネットショッピングをするときには、お店のサイトにアクセスしますよね。でも、そのサイトが本当にお店のサイトなのか、偽物ではないか、どうやって判断できるでしょうか?ここでSSLが役立ちます。

SSLでは、通信相手の認証に「デジタル証明書」というものを使います。デジタル証明書とは、通信相手の身分や公開鍵という暗号化に必要な情報を含んだ電子的な証明書です。この証明書は、「認証局」という信頼できる第三者機関が発行しています。認証局は、通信相手の身分を厳しく審査してから証明書を発行します。

あなたがお店のサイトにアクセスするときには、まずお店のサーバーからデジタル証明書が送られてきます。あなたのブラウザは、その証明書を検証して、お店のサイトが本物であることを確認します。もし偽物だったり改ざんされていたりしたら、ブラウザは警告を表示してくれます。このようにして、SSLは通信相手の認証を行います。

以下の図は、通信相手の認証の流れを示しています。

image

通信の暗号化

通信の暗号化とは、インターネット上でやり取りするデータを他人に読めないように変換することです。例えば、あなたがネットショッピングで商品を購入するときには、クレジットカード情報や住所などを入力しますよね。でも、そのデータがそのままインターネット上を流れるとしたら、途中で悪意のある人に盗み見られたり改ざんされたりする危険性があります。ここでSSLが役立ちます。

SSLでは、通信の暗号化に「共通鍵暗号」と「公開鍵暗号」という2種類の暗号化方式を組み合わせて使います。共通鍵暗号とは、同じ鍵を使ってデータを暗号化と復号化をする方式です。公開鍵暗号とは、公開鍵と秘密鍵という異なる2つの鍵を使ってデータを暗号化と復号化をする方式です。公開鍵は誰にでも知られていても構わない鍵で、秘密鍵は自分だけが持っている鍵です。

あなたがお店のサイトにアクセスするときには、まずお店のサーバーからデジタル証明書に含まれる公開鍵が送られてきます。あなたのブラウザは、その公開鍵を使って、共通鍵という新しい鍵を作ります。そして、その共通鍵を公開鍵で暗号化してお店のサーバーに送り返します。お店のサーバーは、自分の持っている秘密鍵で共通鍵を復号化します。このようにして、あなたのブラウザとお店のサーバーは共通鍵を交換します。

あなたがクレジットカード情報や住所などを入力するときには、あなたのブラウザは共通鍵でそのデータを暗号化してお店のサーバーに送ります。お店のサーバーは共通鍵でそのデータを復号化して受け取ります。このようにして、SSLは通信の暗号化を行います。

以下の図は、通信の暗号化の流れを示しています。

image

まとめ

以上が、SSLの仕組みの概要です。SSLはインターネット上で安全にデータをやり取りするために必要な技術です。今後もインターネットの利用が増える中で、SSLの重要性は高まっていくでしょう。
```

文章の長さには「中」を指定しましたが、「中」でも結構な文章量を書いてくれるようですね。

驚いたことに、「大見出し」と「小見出し」まで使い分けていたようで、Bingの文章をそのままWordPressに張り付けただけで、見出しレベルまで自動で変換されています。
残念ながら図解は閲覧できませんが、それでも図解さえ自作して補えば、AIが自動で作成した文章をそのままWordPressにコピー&ペーストするだけで1本の記事が書けそうなクオリティです。

このように、「インターネット上に公開された情報をつなぎ合わせる」程度であれば、AIでもそれなりの文章を書けるようです。

但し、AIの書いた文章を鵜吞みにせず、必ずご自身で訂正しながら活用してくださいね。でないと、「企業が発信している公式の情報」として、インターネット上に誤った記事が蔓延してしまいますので……。

――というわけで、ここからはインターネットで公開されている記事たちの闇深いお話です。

検索上位の監修された記事が、正しいことを書いているとは限らない

この見出しを読んで、とっさに「こたつライター」を思い浮かべた方もいらっしゃるかも知れませんね。元々の言葉の意味は違ったそうですが、今では「裏を取らずに、テレビやインターネットで集めた情報だけで記事を執筆する方々のこと」として浸透しています。

それに少し近い話をします。

SEO対策記事を専門とするライターがいる

世の中には、SEO対策記事を代行執筆してくれる会社がありますよね。毎月のSEO対策コンサルティングと併せて、企業ごとに選定された最適なSEO対策キーワードを元に、記事を毎月数件ずつ書いてくれるサービスです。
特にリスティング広告を出されている会社であれば、リスティング広告・SEO対策コンサルティング・SEO対策記事執筆代行をセットで利用されているところも多いと思います。

当然のことながら、SEO対策記事ライターのそれぞれが、複数企業の執筆代行を担当しています。その忙しい中で何故多くの記事を書けるのか、不思議に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

監修されない記事と記事転載の事情

もちろん、すべてのSEO対策記事ライターがこれに該当するわけではありませんが、世に出回っているSEO対策記事の多くが、先にインターネットに公開されている記事を元に作成されています。中には、文章を丸ごとコピー&ペーストして、わずかな言い回しだけ調整してノルマをこなすライターも数多く存在するのですね。

これは仕方の無いことですが、ライターもクライアントの業務の細部までは流石に知り得ませんので、文章の監修、つまり「文章の最終責任はクライアント側にある」と考える方がほとんどです。

そうして書かれた記事をクライアントに提出しますが、クライアント側のWeb担当者も自社の日常業務に追われている身ですので、ライターが書いた文章を丁寧に読み、細部まで添削される方はあまり多くありません。

ましてSEOのことはさっぱりわからない、という理由から、「SEOに関する記事なので、SEO有識者に任せておく方が無難」となる傾向が強いのです。

ただ、SEOのルールの一つに「監修した有識者の情報を掲載する」というものがあるので、テンプレート的に執筆者または監修者の情報がコラムの下部に配置されます。

その結果、「有識者が監修している(と見せかけた)記事」が大量に発信されているのですね。

少し脱線しますが、そもそも、Googleなどの検索エンジンは、より正しい情報を老若男女問わずすべてのユーザーに届けようと、常に改良を重ねています。

  • SEO
  • UI/UX
  • アクセシビリティ
  • ユーザビリティ

上記のいずれも本来は障がいの有無に関わらず、すべての方が見やすいWebページで、正しい情報を届けるために設けられたルールのことです。

  • 1記事1テーマとしましょう。
  • 2,000文字程度書きましょう。
  • 何について記載した記事なのか、一目でわかるように箇条書きでまとめましょう。
  • 文中には画像を挿入しましょう。
  • 図解にはaltでテキストを補足しましょう(音声読み上げ対策)。
  • 結論を述べている箇所にのみマーカーを使いましょう。

などなど、ブログ記事にも細かいルールが色々とありますが、何れも先述の理念に基づいて制定されたものです。

そのため、小手先のテクニックを気にしなくても、正確な情報を伝えていれば、ある程度は自然と達成できるものだと私は考えています。

ただ、先述のように目先のSEOだけを追い求める記事が多量に発信されているので、より信憑性の高いWebページを優先してユーザーに届けられるよう、「コラム記事を監修した有識者の情報を書きましょう」などの追加ルールが設けられているのです。

SEO会社と検索エンジンのいたちごっこ

「不確かな情報」を誤って広めないために、検索エンジン側が検索アルゴリズムを更新し続けるのに対して、最新の検索アルゴリズムに則ったSEO対策のコンサルティングを行うのがSEO会社ですので、この2つの関係性はいたちごっこにも似ています。

これの難しいところが、SEO会社が悪いのかというと決してそうではなく、それぞれの仕組みが色々と難しい関係性で成り立っている、という点です。

そういう経緯で、「何処まで信じて良いか釈然としない」インターネット記事が今も発信され続けているわけです。

インターネット上に出回っている記事はもとより、それを元に生成したAIの文章をむやみに信用してはならない理由が、ここにあるわけですね。

結局、何事も鵜吞みにしないのが一番ですね

ChatGTPの記事でも同じことを書きましたが、作業短縮のために正しく判断できる範疇でAIを活用するのは、決して悪いことではありません。

ただ、一度インターネットに公開した記事を誰か一人でも保存・拡散した時点で取り返しが付きませんので、特にコーポレートサイトなどの公的な記事については、わずかでも信憑性を保証できない情報は発信しない方が無難だと思います。

そういう意味でも、AIの活用には細心の注意が必要になりますね。